建物に固定するデッキは、建物側の端を外壁沿いに取り付けた根太掛け(受け材)で支えます。束と基礎を1列減らせますが、建物の構造躯体にしっかり接合し、雨仕舞いを確実にすることが前提です。独立型のデッキは、すべての辺を自前の束と大引で支えます。基礎は増えますが、建物の外壁には一切穴を開けません。日本の住宅では、外壁の防水や保証、シロアリへの配慮から、独立型が一般的です。
このガイドでは、それぞれの方式に何が必要か、建物に固定する場合に何に注意すべきか、同じデッキで下地と基礎の数がどう変わるかを説明します。日本にはウッドデッキ専用の国の技術基準が見当たらないため、デッキ材や下地材の施工説明書と、住宅の施工会社の判断が基準になります。
それぞれの方式の荷重の伝わり方
建物に固定するデッキでは、根太は庭側の束に載った大引から、建物側の根太掛けまで渡されます。デッキの重さのおよそ半分を建物が負担します。この接合部は、デッキが壁に沿ってずり落ちることにも、壁から引き離されることにも抵抗しなければなりません。
独立型のデッキでは、根太掛けの代わりに、自前の束に載ったもう1本の大引を建物の近くに設けます。荷重はすべてデッキの束と基礎を通じて地面に伝わります。デッキが建物のすぐ近くにあっても、建物には固定されていません。
日本で独立型が多い理由
- 外壁の防水と保証。 日本の住宅の外壁はサイディングや塗り壁が多く、その裏には防水シートと通気層があります。根太掛けを固定するには外壁材と防水層を貫通してビスやボルトを打つ必要があり、雨漏りの原因になりかねません。テラス屋根の例では、躯体へのねじ止めが長期優良住宅の認定などに影響する場合があり、事前に施工会社への確認が必要とされています(SUUMOリフォーム)。ハウスメーカーの外壁保証の条件も確認が必要です。
- シロアリ。 ウッドデッキは家屋に接して設置されることが多く、シロアリが家屋の床下へ侵入する可能性が高まると、防蟻業者のアサンテは注意しています(アサンテ:ウッドデッキのシロアリ被害)。建物と一体化させず、点検しやすくしておくことが大切です。
- 動きの違い。 建物とデッキは基礎も重さも違うため、地盤の沈下や凍上の動き方が異なります。独立させておけば、デッキが動いても建物を傷めにくくなります。
- 確認申請。 屋根のない床だけのデッキは一般に建築物に当たらないとされますが、屋根を付けて建物と一体の増築となると確認申請が必要になる場合があります(建築基準法第6条)。
建物に固定する場合に求められること
日本には根太掛けの取り付け方を定めた国の基準が見当たらないため、建物に固定する場合は、住宅の施工会社や建築士に構造と雨仕舞いを確認してもらうのが前提です。一般的な注意点は次のとおりです。
- 外壁材ではなく構造躯体に固定する。 サイディングや外壁の下地材だけに留めても荷重は支えられません。土台、柱、胴差などの構造材の位置を確認します。
- 雨仕舞い。 根太掛けの上に水切りを設け、外壁を伝う水が根太掛けの裏に回らないようにします。貫通部には防水処理が必要です。
- 留め具。 屋外で防腐注入材に使う金物やボルトは、ステンレスなど、銅系の防腐剤に接しても腐食しにくいものを選びます。詳しくは防腐処理材のガイドをご覧ください。
- 基礎の換気口や点検口をふさがない。 床下の換気や点検の妨げになる位置には取り付けません。
参考までに、米国の住宅建築基準(IRC)では、根太掛けを2×8以上の防腐処理材とし、ボルトやラグスクリューで建物の端根太に固定し、水切りを設けることなどを細かく定めています(米国・アナランデル郡のデッキガイド)。れんがや石の化粧材への取り付けも認めていません。日本の住宅にそのまま当てはまるものではありませんが、建物への固定がそれだけ慎重を要する接合部であることが分かります。
独立型にすべき場合
次のような場合は、独立型が答えになります。
- 外壁がタイル張りや塗り壁で、穴を開けると補修が難しい。
- ハウスメーカーの外壁保証や長期優良住宅の条件に影響する。
- 取り付け位置に構造材がない、または位置が分からない。
- 基礎の換気口や点検口、配管がデッキの取り付け位置にある。
- 庭の中ほどなど、デッキが建物から離れた位置にある。
日本では、こうした条件に当てはまらなくても、最初から独立型を選ぶのが普通です。
計算例:同じ3.6 × 2.7 mのデッキを両方の方式で
建物に沿って3.6 m、張り出し2.7 mのデッキで、根太を400 mmピッチで建物から離れる方向に渡す場合を考えます。3.6 mの辺に沿って根太は10本です(3,600 ÷ 400 = 9区画、プラス1)。根太の本数はどちらの方式でも同じです。変わるのは、建物側の端を何で支えるかです。数値はウッドデッキ下地計算ツールの結果です。
建物に固定する場合
- 根太掛け: 3.6 mの材料1本(4 m材から)を建物の構造躯体に固定します。
- 根太の取り付け: 根太掛け側の根太10本を、根太受け金物などで固定します。
- 外側の大引: 前端から100 mm内側に大引1本。束の間隔を最大900 mmにすると束5本、最大1,200 mmなら4本です。
- 基礎: 4〜5か所。
- 追加作業: 構造材の位置の確認、外壁の貫通と防水処理、水切り。
独立型の場合
- 根太掛けなし。 建物側から100 mm内側のもう1本の大引がその役割を担います。
- 大引: 前後に2本。
- 基礎: 束の間隔900 mmで10か所、1,200 mmで8か所。建物側の束が、固定型で根太掛けが負担していた荷重を受け持ちます。
- 追加作業: 建物の基礎の近くは埋め戻した土であることが多いため、建物側の束石の下はとくに入念に突き固めます。高さのあるデッキでは、根がらみや方づえで横揺れを抑えます。
つまり、束石4〜5か所と大引1本の追加と、根太掛け、防水処理、外壁を開ける作業とを天秤にかけることになります。束石の数とコンクリート量はウッドデッキ基礎計算ツールで、全体の費用はデッキ費用計算ツールで確認できます。
長所と短所の比較
| 建物に固定 | 独立型 | |
|---|---|---|
| 基礎 | 少ない | 多い(大引の列が1つ増える) |
| 下地 | 大引1本+根太掛け | 大引2本 |
| 外壁 | 穴を開ける。防水処理が必要 | 手を加えない |
| 住宅の保証への影響 | 確認が必要 | ほぼなし |
| 雨漏り・腐朽のリスク | 雨仕舞いが不十分だとある | ほぼなし |
| 横揺れへの抵抗 | 建物が助けになる | 束、大引、根がらみで確保 |
| 建物との相対的な動き | 建物と一緒に動く | 独立して動く。壁との間にすき間を設ける |
トラブルの原因になる固定方法
- 外壁材だけに留める。 構造材に届いていないビスは、荷重や揺れで抜けたり外壁を割ったりします。
- 水切りや防水処理がない。 根太掛けの裏に回った水が、見えないところで外壁の下地や構造材を腐らせます。
- 普通の鋼材のビスや金物を使う。 銅系の防腐注入材に接すると、めっきの薄い鋼材は早く腐食します。
- 基礎の換気口や点検口をふさぐ。 床下の湿気がこもり、点検もできなくなります。
トラブルの原因になる独立型の納まり
- 埋め戻し土の上に束石を置く。 建物の基礎の近くは埋め戻した土であることが多く、締め固めが不十分だと沈下します。
- 建物との間にすき間がない。 外壁にぴったり付けて作ると、ごみや湿気がたまり、デッキ材の伸縮で外壁を押すこともあります。リーベは建物や壁との間に3〜5 mm程度(リーベ:ウッドデッキの張り方)、人工木のルチアウッドは7 mm程度(リーベ プロ)のすき間を設けるよう案内しています。
- 横揺れ対策が足りない。 高さのあるデッキでは、鉛直方向の荷重に問題がなくても、ぐらついて感じられます。束どうしを根がらみでつなぎましょう。
- 束や大引が地面に近すぎる。 地面に近い部材は腐朽やシロアリの被害を受けやすいため、防腐防蟻の加圧注入材や鋼製束を使い、デッキの下の通気を確保します。基礎の考え方はデッキの基礎と凍結深度をご覧ください。
どちらを選ぶか
日本の住宅では、ほとんどの場合、独立型が安全で簡単な選択です。外壁に手を加えず、住宅の保証や雨仕舞いの心配がなく、デッキだけを補修・交換できます。建物に固定するのは、施工会社が構造と雨仕舞いを確認し、そのうえで固定するメリットがある場合に限りましょう。どちらにしても根太の割り付けは同じです。根太ピッチの決め方は根太ピッチのガイドで、計画の進め方はウッドデッキの計画の立て方で解説しています。
よくある質問
独立型デッキは建物に固定するデッキより安全ですか?
正しく施工すれば、どちらかが本質的に安全ということはありません。独立型は根太掛けの施工不良や雨漏りのリスクをなくせますが、より多くの基礎と十分な横揺れ対策に頼ることになります。問題のほとんどは方式の選択ではなく、施工の質から生じます。
ウッドデッキを外壁にビスで固定してもよいですか?
外壁材だけに留めるのは避けてください。荷重を支えられないうえ、防水層を傷めて雨漏りの原因になります。固定する場合は、住宅の施工会社に構造材の位置と防水処理の方法を確認し、保証への影響も確かめてください。
独立型デッキの基礎は凍結深度より深くする必要がありますか?
寒冷地では、独立型でも凍上で束が持ち上がると床が傾き、掃き出し窓との段差が変わることがあります。北海道では市町村ごとに凍結深度が公表されているので、地域の値を確認し、基礎の深さを検討してください。温暖な地域では、締め固めた地盤に束石を据える方法が一般的です。
独立型デッキは建物からどれくらい離せばよいですか?
法令で決まった距離はありません。デッキ材の施工説明書に従い、建物との間に数mm程度のすき間を設けるのが一般的です(リーベでは3〜5 mm程度、ルチアウッドでは7 mm程度)。すき間が大きすぎると、掃き出し窓から出たときにつまずく原因になるので注意してください。